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診療案内Guide

肛門周囲腺腫(シーズー12歳 未去勢雄)

肛門周囲に腫瘍ができ、病院を受診したところ切除するには肛門を全部摘出しなければならず人工肛門による管理が必要になると言われた。手術をためらっていたところ、腫瘤がどんどん大きくなり自潰し、出血するようになってしまい、何か治療法がないかとセカンドオピニオンを希望し来院されました。

初診時(第1病日)、肛門の腫瘤は最大で直径10cmほど、そのほかにも多数の腫瘤が認められました。大きな腫瘍は自潰し、出血、一部壊死しており悪臭を放っていました。

初診時外見。大小様々な腫瘤が肛門周囲に発生しています。
最大の腫瘤は直径10cmほどで、自潰し出血を伴っており、おむつを装着した生活を続けていました。

 

血液検査では高カルシウム血症を認めました。オーナー様と今後の方針を相談し、まずは精査をして腫瘤の拡がり(原発巣の浸潤の確認)、リンパ節の腫脹の有無(所属リンパ節の転移の有無)、その他腹腔内の臓器に腫瘤が認められないか(遠隔転移の有無)を確認することにしました。

第3病日にCT撮影、腫瘤の組織生検及び去勢手術を実施しました。
造影CT撮影では腹腔内臓器に腫瘤陰影はなく、リンパ節の腫脹は認めませんでした。組織生検の結果は肛門周囲腺腫との診断でした。高カルシウム血症に対しては対症療法を実施した結果、第4病日には正常値まで下がりました。以上の結果から、腫瘍は良性の肛門周囲腺腫であり、腫瘍を取りきれれば完治することが期待できました。

第11病日、一番大きな腫瘍の切除手術を実施しました。手術は腫瘍の辺縁での切除を行い、肛門の機能を温存しました。大きな皮膚欠損が認められたので回転皮弁を用いて創を閉鎖しました。

第18病日、一部、創の離開を認め、再縫合を実施しましたが、その後去勢の効果もあり、小さな腫瘤も縮小し手術から2年経過した現在も排便も問題なく元気に過ごしています。

術後2ヶ月経過。再発もなく小さな腫瘍も消失しています。
排便も問題なく元気に過ごしています。

コメント

肛門周囲腺腫は未去勢の雄犬に発生する、ホルモン依存性の腫瘍です。良性の腫瘍なので、転移などはありませんが、肛門括約筋周囲に多発性に発生し二次感染を伴い、不快感、悪臭などからQOLを下げてしまいます。アンドロゲンという男性ホルモンが腫瘍の形成に関わっているので小さな腫瘍の場合去勢手術だけで腫瘍が縮小することもあります。
本症例では初診時、高カルシウム血症もあり肛門周囲腺癌という悪性腫瘍の可能性も考えましたが精査によって肛門周囲腺腫であることがわかりました。腫瘍が良性なのか悪性なのかで手術法は大きく異なってきます。本症例が悪性腫瘍だった場合、拡大手術を行い、肛門の全摘出を実施し、人工肛門の設置が必要だったと思われます。もしくは抗がん剤、放射線治療などを先に行い、腫瘍を小さくしてから手術をするなど数段階に分けた長期の治療が必要だったと考えられます。今回、先にCT検査及び組織生検を実施したことにより、良性腫瘍であると診断でき、最小限の手術で肛門を温存することができました。
腫瘍に対して外科手術を実施する場合、できるだけ多くの情報を集めてから手術計画を立てることが重要です。特に治療計画によってその後の生活が大きく変わることが予想される場合はできるだけ多くの選択肢をオーナー様に提示できるようにすることが大事であると再認識させられた症例でした。

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